時代を越えて、恋人になっちゃいました。
それからだいたい3時間後、ようやく騰蛇が目を覚ました。
「気分はどうだ? 」
「決して良くはないな。かと言って悪くもない。業火の力が使えないこと以外は正常だからな」
「これからお前に少し質問をする。順番に答えろ」
「わかった」
ソウの鋭い目線に、似た形の目を持つ騰蛇も素直に従った。
って言うか、やっぱり騰蛇の瞳って夕焼け色なんだ。
公園で戦ったときは光の加減かなって思ったんだけど。
「まず、子供たちをさらったのはお前か? 」
「ああ、そうだ」
騰蛇は、呆気ないくらい素直に答えた。
「理由は? 」
「寂しかったから、だな」
騰蛇は夕焼け色の目を細めて呟いた。
「寂しかったの? 」
「あれ、さっきほどの強い気配はねぇんだ…。まあいい。そ、寂しかった」
「なんで? 」
「多分お前らは俺が十二神将最強の火将、凶将騰蛇って知ってんだろうよ。おかげさまで俺は十二神将の中でも嫌われモンってわけ」
「それが寂しかったの? 」
「それもある。でももっと大きな理由があったんだ」
「教えてくれない? 」
「別にいいけどよ……。俺さ、ここ何年も主がいねぇんだ。別に誰かに縛られて暮らすのが好きなわけじゃない。だけどよ、前の主が早死にだったもんだから、なんか心に穴が空いちまってさ」
そこで言葉を区切ると、騰蛇は心を落ち着けるように大きく息を吐き出した。
「こうなったのは2度目なんだ。1度目は今より前なんだけどよ。そんときは1人の娘がずっとそばにいてくれた。何年かしたら俺もまた別の主ができたからすぐ返したんだ。でも今回は正直辛かった。最初の主の子孫だったんだ。なのに早死にしちまって…」
夕焼け色の瞳から、堪えられなくなった涙が零れ落ちた。
「だからたくさんの子どもを自分のところに連れてきた。そんでみんなで遊んでた」
私は騰蛇が寝ている布団に突っ伏した。
「だからあの空き地にもあなたの言葉が残ってたんだね」
すると騰蛇は驚いたように涙に濡れた目を見開いた。
「お前にはあれが聴こえたのか? 」
「うん。ちゃんと聴こえたよ」
私の頬を、一筋の涙がそっと伝った。