時代を越えて、恋人になっちゃいました。
「失礼します」
道着に着替えた私は、お辞儀をして道場に足を踏み入れた。
中にはまだ、部長の徳和先輩しかいなかった。
「おう、尾崎。早ぇじゃん」
「徳和先輩こそ」
「俺ぁ一応部長だからな。お前は? 」
「稽古を休んでしまったので」
「そういやそうだったな。みんなが来るまで時間あるし、いっちょ俺とやってみっか? 」
徳和先輩は冗談っぽく言った。
私と試合するっての?
へぇ、度胸あんじゃん。
「先輩って剣道始めたの、最近ですか? 」
「まぁ、最近っちゃそうだね。高校入ってからだよ」
やっぱり。
私の試合、見たことないんだ。
「いいっすけど、私強いですよ? 」
「俺だって中学からの連中蹴散らして部長やってんだぜ? 伊達じゃない」
先輩はクイっと口角を上げた。
「じゃあやりますか」
「おうよ」
先輩、舐めないでくださいよ。
中学3年間全国一だった、私の実力を。