時代を越えて、恋人になっちゃいました。
お風呂の後、私は子狐姿の騰蛇を抱いて、父さんの書斎に向かった。
_コンコン。
「はい」
「蒼空です」
「おう、入れ」
父さんは疲れた様子で、今日使ったらしい資料を整理していた。
「騰蛇も連れてきた」
「ああ、主人の件か」
「そう。騰蛇にはまだ言ってないけど、5人くらいピックアップしてみた」
「教えてくれ」
私は選んだ人とその理由を順番に述べていった。
「なるほどな。お前、見る目があるな」
「どうも」
「騰蛇殿、いかがかな」
騰蛇"殿"?
騰蛇ってそんなすごい神将なのかな?
「俺はまだいると思うね、俺の主に適任のやつが」
「まことですか。一体どなたなのですか? 」
「こいつ」
騰蛇はそう言って私をしっぽではたいた。
「いてっ! 」
「痛くねぇだろ」
って言うか…。
「私!? 」
「反応遅ぇな」
「騰蛇殿、本気ですか!? 」
父さん、ある意味ひどいよ。
「本気も本気。間違いねぇよ。こいつは一流のセンスを持っている。それこそ、あの安倍晴明に匹敵するくらいな」
父さんが唖然として、騰蛇を見つめている。
もちろん私も。
だって、あの安倍晴明だよ?
天狐とのハーフで、史上最強と謳われる大陰陽師だよ?
「嘘だぁ…」
「嘘じゃねぇよ。俺ら十二神将を最初に使役したのはあいつだ。そしてそれ以来俺たちは同じ主の元に集ったことはない」
マジですか…。
「マジか…」
父さんも驚いてるよ。
そりゃ驚くよ。
こんなへっぽこ陰陽師が。
剣道しか取り柄のない女の子が。
安倍晴明に次ぐセンスを持ってるだなんて。