時代を越えて、恋人になっちゃいました。
それでも一応、女子団体の主将になるはずの人なんだからさ、私としてはもっとしゃんとして欲しいわけ。
ま、私が勝てればいいんだけどさ、やっぱり個人だけじゃつまんなくない?
団体の賞状も持って帰ってみたくない?
そんなことを考える私にとって、長渕先輩は主将として、いまいち物足りない先輩なんだよね。
「えーっと、じゃあ応援の時の衣装は男子は学ラン、女子はチアっぽい服で。洋裁なんかは3年副団長の小濵に聞いてくれ。いいな」
ぼやっとしてる間に説明が全部終わっちゃったみたい。
今日は話し合いだけにするみたいで、応援団員の人たちもぞろぞろと教室を出て行く。
「そーら! ちゃんと聞いてた? 」
「まさか。最初と最後くらいしか聞いてないよ」
楓香が驚いたように、もともと大きい目をさらに大きくさせている。
「あんた、よくそれで人の信頼を集められたね」
「ん? ありがとう? 」
「いや、褒めてないから」
「んー、ですよねー」
呆れた顔の楓香は放っておいて、私も荷物をまとめた。
「部活? 」
「うん。楓香もでしょ? 」
「んーん、今日はサボりー。新しいキャプテン嫌いなんだよね〜」
いやいや、好き嫌いで部活サボらないでしょ、普通。
ま、私には関係ないかな。
「じゃ、楓香また明日。司行こ」
「おう! じゃーな楓香」
「司、蒼空、ばいばい」
体育館と下駄箱は逆方向だけど、下駄箱と道場は同じ方向にあるんだよね。
というわけで私たちは一緒に教室を出てきたわけです。
「なー、ソウはよかったのか? 」
「なにが? 」
「今、連れて来なくて」
「あー、大丈夫。だいたい逆方向じゃん。階段までしか一緒じゃないよ」
「そか」
下駄箱で司と別れた私は、すぐに道場へ向かった。
そこでなにが起きてるかなんて知らずに。