時代を越えて、恋人になっちゃいました。
「嫌だろうとなんだろうと、風沢先輩は福澤先輩のもんじゃないんすよ。考えたら分かるっしょ。風沢先輩が長渕先輩と仲良くしようと、はたまた福澤先輩たちと仲良くしようと、それは風沢先輩が決めることじゃないんすか? 」
正論という名のナイフを、福澤先輩に投げつける。
どうやら先輩はこのナイフを避けきれなかったようで、はっきりと刺されたような顔をした。
「そ、そんなこと…」
「分かってるって? 分かってねぇよ、残念だけど。分かってるっちゅーのは実践して初めて証明されるんだ! 」
「お、尾崎さん! 」
慌てたように長渕先輩が私の名を呼んだ。
きっと敬語を崩したからだろう。
だけど、ここでこう言わないで何と言う。
あんたも、私も、傷だらけになるのが分からない?
「保身のために正論を武器にするのは、間違ってる! 」
長渕先輩が立ち上がる。
「正論は保身ではなく、話し合いの軸として用いられるべきよ! 保身のための武器に相応しいのは個人の思想や意見だけ。それと…」
長渕先輩は私を見て、言った。
「年上の人に対する態度がなってない人は道場に入れません。副部長の権限を持ってあなたを1週間、部活停止とします」
言うなり長渕先輩は更衣室を飛び出した。
「あっ」
長渕先輩に伸ばした私の手は、空を切った。