時代を越えて、恋人になっちゃいました。
「おい」
ファミレスを出たところでしゃがみこんでいた蒼空に、声をかける。
「なに? 」
くぐもって聞き取りにくいはずの声だが、そんなことはない。
一緒に過ごしてきた年月が、時間の長さがそうさせるんだろうな、きっと。
「顔の熱はひいたか? 」
「…からかってる? 」
「当然。何か問題でも? 」
「あるね」
恥ずかしいからなのか、膝の間に埋めた顔を上げずに返す蒼空。
俺はその隣にしゃがんだ。
触れた肩に驚いたのか、蒼空がビクッと肩をすくませた。
「なぁ」
「…なによ」
「たまには俺の部屋でも来るか? 」
「えっ? 」
「弁当、食うんだろ? だったら俺の部屋で食おうぜ。今日お袋も親父もいねぇし」
顔を上げた蒼空は目を見開いた。
「いいの? 」
「別にいいし。昔はよく来てたのに、最近全然こねーんだもん」
多分誠司がいたから、なんだろうな。
彼氏だって、彼女がホイホイ他の男の部屋に行くのをいい気持ちで捉えはしないだろう。
「じゃあ、行こ? 」
さっきからかった余韻なのか、少しムスッとした様子で立ち上がる蒼空。
それに続いて俺も立ち上がった。
そして、蒼空に向かって手を差し出した。
「今度はなに? 」
「手、」
「あ、ああって、ええ!? 」
「なに驚いてんだよ、普通だろ? 」
「えぇ、そうなのかな? 」
「そうだ」
俺はそう言うと、少し強引に蒼空の手を取った。
「……ソウばっか余裕じゃん」
少し後ろから聞こえてきた呟きに、心の中で反論する。
___俺だって、結構余裕ねぇよ。
【翔真side end】