時代を越えて、恋人になっちゃいました。
「お主、名は? 」
「あなたには私が見えるのね」
「そなたが上様と読んだあたりからな。そなたが私の頃の記憶を取り戻し始めているからだろう」
「そうみたい。上様は私を見つけてくださらなかった…」
「そうしょげるな。私はそなたが上様に見つからなくかよかったと思っている」
「なぜ? 」
「私の生まれ変わりがおなごだと知ったら、またからかわれてしまう」
そう言った蘭丸の顔は年のわりに幼くて、私は思わず吹き出した。
「笑うでない。ところでまだ名を聞いておらぬが、なんと申す? 」
「蒼空。尾崎 蒼空です」
「蒼空か。よい名だ」
「そう言えば、紅王って誰? 」
「私の鷹だ」
「んー、思い出せない」
「当たり前だ。そなたは生まれて今まで私としての記憶がなかったのだからな。ただ……そなたは私だけの生まれ変わりではないようだ」
「え? 」
「もう一人、誰かの魂を背負っている。それもそなたが記憶を取り戻しきらぬ理由だろう」
私は自分の足下を見た。
蘭丸も黙っている。
___ピィィィー。
それを破ったのは、鳥の鳴き声だった。