時代を越えて、恋人になっちゃいました。

個人強化合宿に行っちゃいました。




体育祭を来週に控えた9月の第1土曜日の今日。


私は新大阪行きの新幹線に乗っていた。


って言ってもまだ新幹線は動いてないけど。


小さな窓の向こうで、ソウが心配そうに私を見ていた。




__プルルルル…

『間もなく、新大阪行きの新幹線が発車いたします。ご乗車になる方はお急ぎください』


少しくぐもったアナウンスが流れる。

私は制服のポケットに入れていたスマホを取り出した。


『行ってきます』


メッセージアプリを開いてそう入力すると、画面をソウの方へ向けた。


それを見たソウは、にっこり笑って口を開いた。


『行ってらっしゃい。頑張れよ』


もちろん声は聴こえない。

だけど、そのメッセージは確実に私に届いた。



『ドアが閉まります。ご注意ください』


プシューと微かな音を立てて、新幹線のドアが閉まる。

そして、ゆっくり、でも確実に新幹線は進み始めた。

ドラマみたいにソウも走ってくれるかなってちょっと期待してたけど、ソウはその場から動いていなかった。

残念。


ソウは右手を高く上げて、私に手を振っている。

ふと視線を移した左手は、固く握られていた。



ああ、ソウは我慢してるんだ。

去っていく人を追いかけるってことは、追いついてしまったらその人を引き止めなければいけないから。

もちろん新幹線に人の足が追いつくわけじゃない。

だけど、追いつかないと思いながら追いかけるんじゃあ、ただの演出になってしまう。

追いかけるなら、本気で。
だけど、引き止められないから。



__だったらこの場で見送ってやる。


ソウの意志を悟った瞬間、私の目から涙が溢れた。



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