時代を越えて、恋人になっちゃいました。
「あのお客様、体調が優れませんか? 」
「あ、いえ、大丈夫です」
いつの間にか車掌さんが席の確認に来ていた。
私は手の甲で涙を拭うと、財布から切符を取り出した。
「はい、確かに。確認できましたので、こちらはお返しします」
車掌さんから切符を受け取り、私は座席に深く沈み込んだ。
ここから京都って、どれくらい時間がかかるんだろう。
2時間…はかかるかもしれない。
今の時間は10時だから、車内販売でお弁当でも買おう。
「…千煌」
「なんだ」
「どこに車内販売いるか見てきて」
「それはなんだ? 」
「んー、イメージ送るから目閉じて私の手に額を当てて」
右手に、人ではないものの温もりが触れた。
今、千煌は隠形しているから、姿は見えない。
だけど、確かにそこにいるって感じれるほどの神気と温もり。
私は千煌に車内販売のイメージを送った。
「わかった、待ってろ」
千煌はそう言うと、フッと気配を消した。