時代を越えて、恋人になっちゃいました。
肩を叩かれて、我に返る。
「そなた、そろそろ戻った方が良さそうだな」
蘭丸はそう言って私の足元を指差した。
もともと半透明だったそこは、どんどん色が薄くなっている。
「ほんとだ…。じゃあ帰るね」
「ああ、また来い」
「でもうどうやって来るか分かんないんだよね」
「ならばこれを道標にしろ」
そう言って渡されたのは、短刀だった。
柄には桜の花が彫られている。
「綺麗…」
「そなたにあげよう。私が持つにはもう細いのでな」
「もうって? 」
「前に使ったとき、刃こぼれがひどくなってな。直しに出したらずいぶんと小さくなって返ってきた。それ以来は使っておらぬ」
「そっか。てかこれなに? 刃のそばにあるこの鶴みたいなの」
「これは森家の家紋だ。大事に使ってくれ」
「ありがとう。もうほんとに行かなきゃ」
「また来い」
「うんっ! 」
そう言うと私は光の粒になっていった。