時代を越えて、恋人になっちゃいました。
「また来たのか」
苦笑する蘭丸が目の前にいる。
「悪い? 」
「そんなことはない。ただ飽きぬのかと思ったのでな」
「面白いよ、蘭丸との話」
「それはよかった」
「ところで、何やってるの? 」
蘭丸は文机の前に座り、何かを書いていた。
「ああ、これか? これは母上に宛てた手紙だ」
「そっかぁ。この時代は墨を普段から使っていたんだね」
「そなたの時代は墨を使わぬのか? 」
「あまり使わないよ。墨ってなくなるじゃん」
「ああそうだが…」
「私の時代はずっと墨がついたような物を使ってるの」
「そうか」
それからはどちらも話さなかった。
蘭丸のそばで燃えている蝋燭の炎だけが、2人の影を揺らしていた。