時代を越えて、恋人になっちゃいました。



「また来たのか」


苦笑する蘭丸が目の前にいる。



「悪い? 」

「そんなことはない。ただ飽きぬのかと思ったのでな」

「面白いよ、蘭丸との話」

「それはよかった」

「ところで、何やってるの? 」




蘭丸は文机の前に座り、何かを書いていた。



「ああ、これか? これは母上に宛てた手紙だ」

「そっかぁ。この時代は墨を普段から使っていたんだね」

「そなたの時代は墨を使わぬのか? 」

「あまり使わないよ。墨ってなくなるじゃん」

「ああそうだが…」

「私の時代はずっと墨がついたような物を使ってるの」

「そうか」





それからはどちらも話さなかった。

蘭丸のそばで燃えている蝋燭の炎だけが、2人の影を揺らしていた。






< 30 / 251 >

この作品をシェア

pagetop