時代を越えて、恋人になっちゃいました。




「落ち着いたか? 」

「ん」

どうやら私が泣いてる間に買ってきたらしい、紅茶を渡しながらソウが言った。


なんとか落ち着いた私は、貰った紅茶をありがたく頂く。

初夏の暑い日に相応しい、冷たい感覚が喉を潤す。






チャイムの音がした。
でも、私たちは気付かないふりをして座っていた。





「で、どうしたんだよ? 」


チャイムが鳴り終わったタイミングでソウが聞いた。


「いや、別に…」

「なんもなくて泣くかよ、普通。なんかあったろ? 」

「だって…」

「だって何? 」

「ソウが悪いんだもん」

「はぁ!? なんでだよ! 人がせっかく心配してやってんのに…」

「ソウが私に元気ないって気付いちゃうから…」

「んなん当たり前だろ。何年一緒にいると思ってるんだ」

「でも、誠司は気付いてくれなかった…! 」

「誠司? なんで? 」

「そんなの知らないよっ! 」

「じゃあ気付いて欲しかったのか、誠司に」




ソウの問いかけに、フルフルと首を横に振った。


「なんだよ、矛盾してんじゃん」

「私だって、わかんないよ…」



そう、分かんないの。


本当は気付いてほしくなかった。

だからあの誠司の反応は思い通りのはずなのに。

なんで悲しくなるの?

なんで辛くなるの?



なんで、なんで、なんで………!






ポンポン、と頭に何かが触れた。



はっと振り向くと、ソウの手だった。




ソウはここ数年稀に見る、優しい顔で言った。



「素直になれよ、蒼空」





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