君は振り向かない
真由ちゃんと、駅までのわずかな道のりを歩く。
背の低い彼女を見下ろす。
彼女の、長いまつげが綺麗で思わず見とれていると、
真由ちゃんが突然、俺の方へ顔を上げた。
至近距離で真由ちゃんの顔があり、胸が高鳴った。
「何?また具合悪い?」
「いやっ……真由ちゃんがあまりにも可愛いから」
「口だけは元気みたいだね」
真由ちゃんはそう言って、再び前を向いた。
俺のこと、嫌いって言ってたのに何でこんな優しくしてくれるんだろう。
俺のこと好きになった?
いいや、まったくそんな感じではない。
彼女の優しさなんだろう。
困った人をほっとけない。
「真由ちゃん、今日は本当ありがとう……優しいんだね」
「別に。お礼言われるほどのことしてないからやめて」
女の子に、いつも触れたい俺だが、今日はこうして話してるだけで心が満たされる。
駅までの道のりが短いと思ったのは、初めて。