君は振り向かない



真由ちゃんは、いなかった。



「あら、王子様の登場?」



菜々子が声を出して笑い始めた。



こいつの仕業だ……。



「てめぇ、真由ちゃんの噂……」



「へぇ。真由ちゃんって呼んでるんだぁ。橘真由のこと」



菜々子は髪をクルクル指で巻きながら、ニヤニヤしていた。



「あの、真面目ちゃんに誘惑されちゃったんだね頼斗」



耳元でそう囁いてきた菜々子。




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