君は振り向かない
「最初、よく橘真由に話し掛けてる頼斗を見て今度のターゲットは橘真由なんだと思ってた。なのに本気で惚れたから、もう私らとは終わり?ふざけんなって思って」
菜々子の声が大きくなっていく。
クラスの皆の視線が俺らに注がれる。
俺は菜々子の腕をとり、
「場所変えるぞ」
と、言って屋上へと向かった。
ここなら誰もいないはずだ。
「頼斗、久しぶりにする?」
菜々子はそういって耳元にキスをしてきたが、俺の体が一瞬で拒否した。
「ごめん。もう無理なんだ」
俺の言葉に、再び苛立った顔をする菜々子。
「そんなに、橘真由がいいんだ?頼斗のことだからもう手を出したんだろうけど?そんなによかった?」
俺は屋上のフェンスを足で蹴った。
「そんな簡単じゃねーんだよ!触れたくても、触れたら壊れちゃいそうで……笑顔見るだけで俺は幸せなんだ」
俺の言葉に、菜々子は鼻で笑う。
「きんもっ!何、純愛ごっこしてんの?頼斗頭おかしいわ」
「遊びばっかの俺が本気で好きになったんだよ!傍にいるだけで、緊張するし、頭真っ白になっちまう!」
俺は座り込んだ。
「でも、俺の一方的な片想いなんだよ。真由ちゃんは関係ないのに、俺のせいで……」
俺は苛立ちから、髪をグシャグシャした。