マウンドの君
悠馬の投げる球はとてつもなく速い。



俺だって手加減した球がやっとのことで取れるほど。


今日も悠馬は手加減して投げてくれる。




コンコン




―俺の部屋に誰か来るなんて珍しい―




そう思いながらも返事をする。




「あー??」



カチャ



「兄さん??」





「ッツわ、拓哉!?な…なに!?」




「俺……」





深刻な顔をして俯く。





「俺……野球がやりたい…」




「っなんだ!!
そんな事かよ!!びびった...」




正直、あの勉強バカの拓哉がそんなこと言うなんて驚いた。でも、それ以上に嬉しさが込み上げた。





ガサガサ





俺はベッドの下から昔ショートを守っていた時のグローブを取り出した。




「あーホコリ被ってんなぁ...」




パンパン




「はいよ!!そうと決まればキャッチボールするしかねぇ!!」





「あ…りがと。」




俺もグローブを持って家の近くの広場へ走った。




「拓哉!!とりあえず全身を使ってボールを取れ!!グローブはそのうちに使える様になる!!」





「うん...」
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