水面合わせ鏡
◇・◇・◇
「『水面合わせ鏡』か……」
幼い手にはまだ大きい手鏡を持った少女が呟いた。
少女がいる場所は学校の敷地内にあるプール。塩素の臭いがする薄暗い室内のプールには少女しかいない。
彼女の名前は松木愛奈(マツキ アイナ)。小学校3年生。
偶然『水面合わせ鏡』の話を聞いた愛奈は話が本当かどうかを試そうとしていた。
用意していた小さな時計を見てみれば、現在4時40分。水面合わせ鏡をするにはまだ早い時間だ。
愛奈は試にプールの水面と鏡を向かい合わせにして覗き込んでみた。
しかし、水面に映る鏡は合せ鏡になっていなかった。鏡にプールの底がうつっているだけだ。
「本当なのかな……」
だんだん疑わしい気持ちが大きくなる。
だが、愛奈は4時44分になるまで待った。
そして44分の1分前。
愛奈は念のため周りに人がいないことを確認すると、鏡を持って準備をした。