水面合わせ鏡

愛奈は息を詰めそのときを待つ。

そして、時計の長針が44分になった瞬間、愛奈は水面に鏡を翳し覗き込んだ。

「わぁ……」

思わず声を漏らす。

ちょっと前に試した時はプールの底がうつるだけだったが、今は合せ鏡になっていた。

愛奈の後ろと前が交互にどこまでも続いて行く。

ゾクゾクとした興奮に包まれる愛奈だったが、その興奮はすぐに恐怖へと変わった。

水面の合わせ鏡の奥底の暗闇がピクッと蠢く。

なんだろう、と愛奈がもっとよくみようと水面に顔を近付けたときだった。

バシャ!と音を立てて水飛沫があがり、瞬く間に2本の青白い腕が伸び愛奈の頭を掴んだ。

愛奈は急いで離れようとしたが、それよりも早く腕が彼女の頭を水の中に引きづり込もうとする。
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