Fighting fantasia
実の兄に今わの際に暴言を吐かれても、マーズは笑みさえ浮かべていた。

この兄が、優しい言葉をかけてくれるなどとは思っていない。

そんな事よりも。

「に、兄さん…修行…修行は…」

「貴様に言われるまでもない」

マーズを抱き起こす事すらせず、ウラヌスは鼻を鳴らした。

「一時間も必要なかったから、こうして戻ってきた。健二の奴はモタモタとまだやってやがったがな…奴を待つまでもない。エフェスは俺が倒してやる」

「そ…そうかぁ…」

安心したように、マーズは目を閉じる。

「さ…流石兄さんだ…兄さんはいつだって…僕の…憧れ…」

それが、マーズの最期の言葉。

ウラヌスが駆けつける最後の最後まで彼を信じ、必ず強くなって戻って来てくれると願いながら、一人地獄を耐え抜いてきた。

そして信じた通り、ウラヌスは戻ってきてくれた。

それだけでマーズは満足だったのだ。

例え自分が命を落とす事になったとしても。

< 75 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop