黒髪の君と赤い瞳の私
「奥村ってなんでそんなに喋らないの?教室でもあまり喋らないよね?」
突然の質問に私の歩く足が一瞬止まる。
「ちょっと人見知りで…。」
下を向いたまま答える。
「でも今日始めて会った俺に学校案内してくれたじゃん。それは人見知りとは関係ないの?」
「それは…。」
本当は人見知りなんかしない。
初対面の人とも普通に喋れる。
でもこの目を見られたらどんなに固く築いた人間関係も壊れてしまうと思う。
そう思って今まで人と目を合わせて会話する事も何か一緒にすることも避けてきた。
「それとも、何かコンプレックスがあって、それが奥村の邪魔をしているの?」
核心をつかれ変な汗が噴き出す。
「俺にもあるんだよ。誰にも言えないコンプレックスが。」
驚きで思わず彼の顔を見る。
「さっき、俺が鏡見てるとこ見ちゃったでしょ。」
気づかれてた…。
でもYESと答えていいのかNOと答えればいいのかわからなくて無反応でいたら彼が続けた。
「あれを見られると顔を見てるって思われがちだけど、本当は髪の毛を見てるんだ。」
どういうこと?
「俺の髪の毛、本当は真っ白なんだ。」
私は地面に向けていた視線を大森君の髪の毛に視線を変える。
その先には真っ黒な髪の毛が。
「これは染めてるの。で、生え際は油断するとプリン見たいになっちゃうから鏡で確認していたんだ。」
照れ笑いをしながら黒く染め上げられた髪の毛をくしゃくしゃとかきながら照れ笑いをする。
「あ、このことは、誰にも言わないでね。俺達の秘密。」
そう言いながら彼は人懐っこい笑顔をこちらに向けて駅の階段登っていった。