黒髪の君と赤い瞳の私
校庭に散った桜の花びらが旋風でふわふわと舞うと、
クラスにどよめきが起きた。
みんなも桜の花びらの旋風見てたの?
そう思って視線を前方に移すと、そこには見知らぬ男子生徒が立っていた。
「今日からこのクラスで過ごす大森蒼真(オオモリソウマ)だ。仲良くしてやってな。」
ニコニコと笑顔で大森君を紹介すると、満足そうな顔をして大森君の肩をポンと叩いた。
すると大森君は少し戸惑った表情を見せてから、自己紹介を始めた。
「はじめまして。大森蒼真です。よろしくお願いします。」
言い終わると同時に爽やかな笑顔で教室を見渡す。
その姿は自信に満ちていて全ての生き物を仲間にしてしまいそうな雰囲気を醸し出していた。
「大森の席はあそこな。」
そう言って先生は私の隣の空席を指さす。
大森君はまたも微笑んで私の隣の席に近づく。
来…来ないで。
教室で1番先生の目につかない角席の隣に来て窮屈にしないで…!
そんなとっても失礼極まり無い事を考えていても大森君は私の隣に座ってしまった。
「よろしくね。」
突然目の前に大きな手が差し出された。
「??」
「名前はなんて言うの?」
「奥村葵(オクムラアオイ)です…。」
「葵ちゃんね。俺、来たばっかで分からない事だらけだから、色々教えてね。」
そう言って大森君は私に向かって微笑んだ。
切れ長の目、綺麗に通った鼻、触れたくなるくらい綺麗な肌。
整った顔立ちは笑っても変わらず、とてもかっこよかった。
ドキッ…
心臓が大きく波打つ。
私は目を見られないように下を向きながら答える。
「よ…よろしく。」
校庭に出来た旋風は砂も花びらも巻き込んで少し大きくなっていた。