黒髪の君と赤い瞳の私
朝のホームルームが終わって1時間目にが始める。
今日の1時間目は現代文。
本を読むのが好きな私にとって現代文は得意な方だ。
たくさんの物語は私を異世界に連れて行ってくれるし、多様な評論は私の知識を奥深い物にしてくれる。
それにしても、隣の席の大森君の周りには大勢のクラスメイトが集まっている。
「蒼真ってどこから来たの?」
「蒼真!今日の放課後カラオケ行こうぜ!」
「蒼真君転校してきたばっかりだからうちらが学校案内してあげる!」
大森君は質問攻めにされてるし、皆は会って早々呼び捨てにしてるよ…。
「隣の県の学校から来たんだ。親の転勤でね。俺は一人暮らしするって言うんだけど親が許さなくて…。」
「カラオケは今日は遠慮しておくよ。まだ引っ越したばかりで片付いて無いんだ。また誘って。」
「学校案内してくれるの?嬉しいな!でも、学校案内はさっき奥村と先に約束しちゃったんだよね。ごめんね。」
大森君を囲っていたグループは私の名前を聞いた瞬間「そんな奴いたっけ?」という空気が流れた。
ほんの少し沈黙が続くとそんな沈黙は無かったかのようにまたグループは騒がしくなった。
「「「奥村と先に約束した?」」」
奥村?
…私の事か。
約束?何を?
…学校案内。
いつ?
…今日の放課後。
え?!最初は気にしなかったけどじっくり考えるとおかしいよ?!
私そんな約束してないよ?
あっ!違う奥村さんか!
…ってそんな訳あるか!!奥村はこのクラスで私しかいないよ!
私が大森君の方を見ると、彼もそれに気づいたのか、
「放課後よろしくね。」
とまた微笑まれてしまった。
そんな綺麗な笑顔で見られたら断れなくなってしまう…。
私は下を向いたまま静かに前を向いた。