黒髪の君と赤い瞳の私
1時間目の始まりを告げるチャイムが鳴ると大森君を囲っていた人だかりは散っていき、
授業が始まった。
「奥村。」
大森君が授業中静かな声で私を呼ぶ。
「…何。」
「教科書見せて。まだ買ってないんだよね。」
へへっと笑いながら机をくっつける。
私は教科書を2つの机の真ん中に置く。
「ありがとう。」
遠かった私達の距離が机をくっつけた分だけ近くなる。
何故か私の心臓はドクドクと脈打っている。
…いやいやいや、
人と極力関わらないって決めてるんだから何意識してるのよ!
放課後の事も断ろう。
私はそう心に決めた。