黒髪の君と赤い瞳の私

掃除を終わらせて教室に戻ると
大森君が1人で手鏡で自分の顔を見ている。
しかも女の子が自撮りをするような角度で…。

もしかして、ナルシスト…?


いやいやそんなこと無いよね?
そりゃかっこいいけど…。


少し気まずく思いながら恐る恐る声をかける。

「遅くなっちゃってごめんね。」

大森君の背中がビクッと震え、手鏡を素早く袖の中に隠した。

「そんなことないよ。掃除おつかれ。じゃあ、案内してもらってもいい?」

私は頷く。

私と大森君は並んで教室を出て歩き出す。

私達のクラスの教室は最上階にあるから、だんだん下に下りていって最後に昇降口に着くように学校を回っていく。


体育館が近づくと運動部の子達が練習する声が聞こえる。

「奥村は部活やってないの?」

「うん。」

「中学の頃は?」

「何も。」

「そっかー。」

体育館の後は家庭科室、事務室、会議室…他にも色々な教室を案内した。

最後に案内する図書館が近づくと勉強をしに来る3年生の先輩方が増える。

「俺らも来年はこうやって勉強しなきゃいけなくなっちゃうんだな。やだなー…。」

大森君は小さく呟くと昇降口に向かった。


「奥村は電車?」

私は首を横に振ってから、

「歩き。」

と答えた。

「駅の方に行く?」

「うん。」

「じゃあ、一緒に帰ろう。」

私は断りたかったけど気の利く言い訳は簡単に見つかるはずも無く
私達は並んで学校を出た。
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