乾闥婆城
一
からからと、軽い下駄の音が通りに響く。
その音に気付いた甘味処の女将が、暖簾を跳ね上げて通りに顔を出した。
「おしのちゃん。ほれ、飴玉あげるよ」
少し先を歩いていた傘が、くるりと反転した。
真っ黒な髪が揺れ、その奥から大きな瞳が女将を見る。
小さな少女だ。
重そうに持っている唐傘に、身体のほとんどが隠れてしまっている。
少女は女将の差し出す手を見、もう一度女将を見た。
「おしのちゃんにあげるよ」
女将が言うと、少女はようやく、とことこと歩み寄ってきた。
そして女将から飴玉を受け取る。
「今日もお使いかい? 偉いね」
小さな手に下げた風呂敷包みに目をやって言う女将をじっと見、少女はぺこりと頭を下げた。
これは飴玉の礼か、先程の問いの返事なのか。
表情を動かすことなく、少女はくるりと背を向けると、からからと下駄を鳴らして遠ざかって行った。
その音に気付いた甘味処の女将が、暖簾を跳ね上げて通りに顔を出した。
「おしのちゃん。ほれ、飴玉あげるよ」
少し先を歩いていた傘が、くるりと反転した。
真っ黒な髪が揺れ、その奥から大きな瞳が女将を見る。
小さな少女だ。
重そうに持っている唐傘に、身体のほとんどが隠れてしまっている。
少女は女将の差し出す手を見、もう一度女将を見た。
「おしのちゃんにあげるよ」
女将が言うと、少女はようやく、とことこと歩み寄ってきた。
そして女将から飴玉を受け取る。
「今日もお使いかい? 偉いね」
小さな手に下げた風呂敷包みに目をやって言う女将をじっと見、少女はぺこりと頭を下げた。
これは飴玉の礼か、先程の問いの返事なのか。
表情を動かすことなく、少女はくるりと背を向けると、からからと下駄を鳴らして遠ざかって行った。
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