乾闥婆城
二
がらがら、と立てつけの悪い引き戸を開けると、仄かに香の薫りが漂う。
それを吸い込み、おしのは土間に入ると、またがらがらと音を立てて引き戸を閉めた。
抱えていた荷物を置き、下駄を脱ぐ。
土間の前は帳場になっており、その奥に座敷が見える。
おしのは帳場の横をすり抜け、座敷とは反対側の厨に荷物を運び入れた。
それから裏を通って、一階の奥の部屋に行く。
帳場の奥は、ずっと奥のほうまであるようだ。
すらりと襖を開けると、おしのは素早く中に身を滑り込ませた。
そこもまた広い座敷で、先の帳場の横に見えた座敷と繋がっている。
「帰ったか」
おしのが襖を閉めると同時に、低い声がした。
きょろ、とおしのが部屋の中を見まわすと、いつの間にやら上座に男が座っている。
「よぅ降るのぅ。お蔭で香がよぅ薫る」
脇息にもたれかかって言う男の前には、白い香炉が置かれている。
この家に漂う不思議な薫りの元は、この香炉のようだ。
おしのは息を大きく吸って、香を胸いっぱい吸い込んだ。
厨のほうから、ばさばさ、ざらざら、という音が聞こえてくる。
先程運んだ食材を、この家のモノが漁っているのだろう。
それを吸い込み、おしのは土間に入ると、またがらがらと音を立てて引き戸を閉めた。
抱えていた荷物を置き、下駄を脱ぐ。
土間の前は帳場になっており、その奥に座敷が見える。
おしのは帳場の横をすり抜け、座敷とは反対側の厨に荷物を運び入れた。
それから裏を通って、一階の奥の部屋に行く。
帳場の奥は、ずっと奥のほうまであるようだ。
すらりと襖を開けると、おしのは素早く中に身を滑り込ませた。
そこもまた広い座敷で、先の帳場の横に見えた座敷と繋がっている。
「帰ったか」
おしのが襖を閉めると同時に、低い声がした。
きょろ、とおしのが部屋の中を見まわすと、いつの間にやら上座に男が座っている。
「よぅ降るのぅ。お蔭で香がよぅ薫る」
脇息にもたれかかって言う男の前には、白い香炉が置かれている。
この家に漂う不思議な薫りの元は、この香炉のようだ。
おしのは息を大きく吸って、香を胸いっぱい吸い込んだ。
厨のほうから、ばさばさ、ざらざら、という音が聞こえてくる。
先程運んだ食材を、この家のモノが漁っているのだろう。