美しいだけの恋じゃない
「含みのある言い方で誘われたから、そして俺自身も確認しておきたい事があったから付いて来ただけです。あなたとは必要最低限の会話しか交わしたくないし、貴重な昼休みをそんな無駄な事に費やしたくないです」

「んまっ。言ってくれるじゃない！」


門倉保の返答に私は思わず度肝を抜かれた。


いついかなる時も、誰に対しても、そつなく愛想良く接している彼が、まさかこんな憎々しげに相手に言葉をぶつけるだなんて。


たとえそれがあの師岡さんであったとしても。


二人の間に一体何が起きたのだろうか…。


「ずいぶん生意気だこと。さっそく須藤美智瑠と打ち合わせでもしたのかしら？」

「は？」


師岡さんのその言い草に、更に心が乱された。


「何でそこで須藤の名前が出て来るんですか」


私も抱いた疑問を、門倉保が彼女にぶつける。


相変わらず冷淡ではあったけれど、若干の戸惑いも浮上したような声音だった。


「ついこの前、あの女にすんごく生意気な態度を取られたから。あんたにもそうするように指示を出したのかと思ったのよ」

「何ですかそれ」

「だって、デキてるんでしょ？あなた達。あの新年会の夜から」

「なっ」


師岡さんのその爆弾発言に、今日何度目になるか分からない鼓動のはね上がりを感じる。
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