美しいだけの恋じゃない
以前、不本意ながら、彼女と山本さんと金子さんが同じ意味の会話を交わしているのを盗み聞きしてしまったけれど、当事者である門倉保に、ダイレクトにストレートに事実確認している場面に出くわした今、その時とは比べ物にならない衝撃を受けた。
先客が居ると分かった時点で上階まで行くのは諦め、すぐに引き返すつもりだったのだけれど、今や私は完全にこの場に足止めされてしまった。
これより先の会話が気になって、とてもじゃないけどこのまま立ち去る事なんかできない。
「誤魔化しても無駄だから。あなた達、あの後しばらくお互いに意識しまくりだったじゃないの。それでなくても私、そういった勘は異常に働くんですからね。もー、見ていておかしいったらなかったわ」
「……あなたに確認しようと思っていたのはそれに関連する事です」
間に笑いを挟んだ、まるで挑発するかのような声音の師岡さんの言葉には反応せず、門倉保は静かに語り出した。
「須藤は恋愛経験が豊富で、過去に数えきれないくらいの男性と付き合いがあったという噂は一体どこから仕入れたものなんですか?それと、井上主任に思いを寄せているというのは本当なんですか?」
………え?
「は?何それ。私そんな事言ったっけ~?」
「とぼけないで下さいっ」
しれっと答えた師岡さんに、門倉保は怒気を含んだ声で応戦した。
先客が居ると分かった時点で上階まで行くのは諦め、すぐに引き返すつもりだったのだけれど、今や私は完全にこの場に足止めされてしまった。
これより先の会話が気になって、とてもじゃないけどこのまま立ち去る事なんかできない。
「誤魔化しても無駄だから。あなた達、あの後しばらくお互いに意識しまくりだったじゃないの。それでなくても私、そういった勘は異常に働くんですからね。もー、見ていておかしいったらなかったわ」
「……あなたに確認しようと思っていたのはそれに関連する事です」
間に笑いを挟んだ、まるで挑発するかのような声音の師岡さんの言葉には反応せず、門倉保は静かに語り出した。
「須藤は恋愛経験が豊富で、過去に数えきれないくらいの男性と付き合いがあったという噂は一体どこから仕入れたものなんですか?それと、井上主任に思いを寄せているというのは本当なんですか?」
………え?
「は?何それ。私そんな事言ったっけ~?」
「とぼけないで下さいっ」
しれっと答えた師岡さんに、門倉保は怒気を含んだ声で応戦した。