美しいだけの恋じゃない
彼に対して改めて、怒りが沸々と込み上げて来た。


「でも、びっくりしちゃった。ジョッキを見たら全然量は減ってなかったのに、それでもあんなに酔っちゃうの?って思ってさー。そんなに弱いんだったら無理しちゃダメじゃなーい。注目を集める為に、わざとやってるのかと誤解されるわよー?」

「あの…。その事なんですが…」


どうにも腑に落ちなくて、休みの間中抱えていた疑問を、私は意を決してぶつけてみる事にした。


私はアルコールを体内で分解する力が生まれつき極端に弱いらしく、過去にそれで酷い目に遭った。


二十歳の誕生日を迎えた年、家族と食事に出かけて初めてお酒を飲んだ際、だんだんと意識が朦朧として来て、気付いた時には病院で点滴を受けていたのだ。


ワインをグラスの半分程度の量、飲んだだけだったというのに。


その時に医師から、私の特異体質について説明を受け、今後はアルコールは摂取しないようにと宣告されたのだ。


お酒を飲んだのはその時が初めてだったし、それまでに数えきれないくらい、除菌や消毒をする為にアルコールを肌に塗布して来たけれど、何かの症状が表れた事などなかったので全く気付かなかった。


また、お酒が使用されている料理や菓子類を口にした事もあったけれど、それも大丈夫だった。


調理の過程でアルコール分は蒸発しているからであろうというのが医師の見解だった。
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