美しいだけの恋じゃない
とにかくある程度度数の高いアルコールをダイレクトに口にし、体内に吸収させてしまうのが良くないらしい。


そしてどこまでなら大丈夫、という実験をするのは面倒であるしそもそも危険である為、一切口にしない方が無難であるという結論に至った。


正直、初めてのお酒はあまり美味しいとは感じなかったし、命の危機に晒される事が分かっている飲み物を再び口にしたいという欲求など起こる筈もなく、アルコール禁止令が出たからといってその後の生活には何ら支障はなかった。


大学ではサークル活動等はしておらず、事情を知っている家族と友人としか食事を共にする機会はなかったし、また、この会社に入ってからも、懇親会や歓送迎会など参加させていただいたけれど、「無理して飲んで体調を壊すことのないように」と注意換気される程で、アルコールを強要されるようなシチュエーションとは無縁だった。


だから無事にここまで過ごして来たのだけれど、今回は思わぬアクシデントに見舞われて…。


私はおずおずと問い掛けた。


「会が始まる前に、飲み物は何が良いか、聞かれましたよね」

「うん」


師岡さんが幹事だったので、各自の希望を聞いて代表で注文したのだ。


「その際に私、烏龍茶をお願いしますと言ったはずなのですが、どうやら手元に来たのがお酒入りだったみたいで…」
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