美しいだけの恋じゃない
ただ繋がっているだけでも内臓が圧迫され、脂汗が浮かんで来てしまうような、嫌な痛みが断続的に続いているというのに、その責め苦から逃れる事を許されないだなんて。


あまりの絶望感に再び意識が朦朧としてきて、彼を押し退けようと突っ張っていた腕の力が抜けてしまった。


それを肯定と勘違いしたのか、彼はゆっくりと、私の中への侵入を再開する。


「あっ。うぅ…」


そして奥まで到達したかと思いきや、今度は同じ速度で来た道を戻って行った。


その動きは徐々にリズミカルになり、言葉を発するどころかすでに呼吸をする事さえ覚束なくなっている私を取り残し、彼は彼のペースで快楽を貪り始めた。


「っあ…。須藤っ…」


何度めかの律動で、彼はくぐもった声を発しつつ全身を強張らせ、さらに私を抱く腕に力を込めた。


その瞬間、張り詰めていた私の意識はとうとう限界を超え、突如目の前が黒い幕で遮断された。


それはこの苦行の終わりであるのと同時に、拭う事のできない忌まわしい汚点の着いてしまった、美しくない私の人生の始まりの瞬間でもあった。
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