美しいだけの恋じゃない
新しい朝
夢を見た。
五十嵐パイプに入社し、一週間の研修を経て、営業一課に配属された私の、初出勤の日から最近までの行動と心理状態をトレースする夢。
『これから一緒に仕事をして行くのはどんな方達なんだろう?』
不安で胸がいっぱいだった。
『ちゃんと受け入れていただけるのだろうか?』
今にも逃げ出しそうになる自分自身を叱咤しつつ、震える足取りで、私は営業部フロアに足を踏み入れた。
ビクビクオドオドと、さぞかし挙動不審であっただろう私に、真っ先にコンタクトを取って来たのは門倉保だった。
『やった!俺にも後輩ができたぞ!』
挨拶を終え、正面の席に座った私に、何の躊躇もなく屈託のない笑顔を向けながら、そう第一声を発した。
さらにチーム内の、井上主任と田中さん佐藤さんはもちろんの事、他の3人の営業マンと自分の紹介を矢継ぎ早に行った。
『って事で、このチームのメンバーは君を入れて8人ね。一番の大所帯だけど、皆良い人ばかりだから安心して』
『おいおい門倉。先輩風を吹かせたい気持ちは分かるけど、ちょっとはしゃぎ過ぎだぞ』
『そうだよ。もうちょっと落ち着きなさいよ』
『言っとくけど、教育係は私なんだからね。人の役目取らないでくれる?』
オタオタしている間に目まぐるしく展開して行く会話。
『ゴメンねー?コイツ、見るからにお調子者でチャラさ加減が半端ないだろ?』