すべてが始まる5分間
出会い
たった5分間の出来事です。
額にじんわりと汗が滲んでいる。
… 遅い、遅すぎる。
幼馴染みの翔が、どうしても買い物に付き合ってくれと珍しく頭を下げるから、
仕方なく来ているのに。
待ち合わせは2時。
今、私の立つ駅前の時計塔の短針は2と3の間を、長針は11を指している。
2時55分。もうすぐ1時間が経とうとしている。
さっきから何度も携帯を確認しているけど、翔からの連絡はない。
はあ、もう帰ろうかな。
そう思って、顔を上げたとき。
派手な茶髪2人組と目が合った。お互い目配せして、ニヤニヤしながら近寄ってくる。
「おねーさん、もしかして1人?」
ナンパ、でしょ。
「すいません、人のこと待ってるんで」
「いいじゃん、俺たちと遊ぼうよ」
と。腕を掴まれる。
やめてください。
そう言おうとしたとき。
誰かがその手を払った。