キミの首輪に、赤い糸を。
私の部屋の扉を開け、相変わらず眠っている真白を見る。

如月さんは私の横で真白を見つめ、「ごめんな」と呟いた。


「...すみません、ありがとうございました」


そう言って如月さんは私の部屋を出て、玄関に歩いていってしまう。


「待って、ください」


その姿がすごく悲しげで、私は如月さんを引き留めずにはいられなかった。


「真白に、何か用があったんじゃないんですか?」


私の言葉に、如月さんは動揺したように見えた。


「真白に会いに来たんですよね?話さなくていいんですか?」

「...いいんですよ。話さなくて。...うん、話さない方が、いい」


自分に言い聞かせるようなその言い方に、私はすんなりと送り出すことが出来ない。


「でも、真白は話したいと思いますし」

「そんなことはありません。真白には和咲さんがいるんですから」


まるで真白を突き放すようなその言い方に、私は少しイラついてしまった。


「...それは、真白が決めることです。如月さんは何も分かってないんじゃないですか...?真白は...真白はあんなに不安がってるのに...!」


イラついていた。
だから、気付けなかった。

如月さんも、苦しんでいることに。

< 109 / 231 >

この作品をシェア

pagetop