キミの首輪に、赤い糸を。
「...真白といると、私は焦ってしまうんです。早く真白に、無くした記憶を取り戻してほしくて。真白が、無くした記憶の中には、私との記憶もあるので」

「如月さんとの、記憶...?」

「ずっと、ずっと昔の記憶です。だから、記憶がない真白といると、すごく辛かった。自分を覚えてくれていない。一緒にいた記憶も、私にしかない。そう思うと、真白を責め立ててしまいそうで。なんで覚えてないんだ、なんで...なんで俺だけがあの記憶を請け負わなきゃいけねぇんだよって...」


本当の如月さんが、見えた気がした。

今の如月さんは、物腰柔らかで丁寧な如月さんではなく、真白を責めたくない、だけど、一人で苦しみに耐えきれずに苦しんでいる、本当の如月さん。


「...だから、だから私は真白を遠ざけた。自分が真白への怒りにまみれて壊れてしまう前に、真白を傷つけてしまう前に、他に真白と一緒にいてくれる人を探そうとした。そして、和咲さんに真白をお願いしました。ですが、気付いたんです。真白と離れることで、余計に苦しくなると」


如月さんはそう言って、微笑んだ。
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