キミの首輪に、赤い糸を。
男の子は私に気付かない、というか、生きているのかも疑うほど動かなかった。

悲鳴をあげそうになるのを抑え、私は男の子に近づく。

そして、かなり近くまで来たところで、男の子が小刻みに震えているのが分かった。


「あの...大丈夫ですか?」


私は男の子の方に傘を傾け、ドキドキしながらも声をかける。

男の子はゆっくりと顔を上げ、私の方を見る。

顔色は悪いのに頬は赤く、目はうつろで、唇の色も悪い。
だけど、不覚にも少し綺麗だと思った。

男の子なのは確かだけど、可愛い女の子みたいに綺麗な顔立ちをしている。

そして、次に目に入ったのは、スタッズがついた黒い、首輪。
ネックレスやチョーカーとは違う、本当に犬がつけているような首輪。
なんで...?

男の子は私の顔をじっと見ている...いや、見ているとは言えない。
焦点が私とは合わず、フラフラと宙を彷徨っている。

男の子は何も言わない。
パラパラと傘が雨を弾く音だけが聞こえていた。

どうするべきだろう...。
さすがにこんな状態の男の子のことを放っておけない。


[ごめん、唯。私今日休むね]


私は唯にそうメッセージを送り、これからどうするかを決めた。


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