キミの首輪に、赤い糸を。
酒を用意したり運んだりする仕事は、初めは遅かったものの少しずつ慣れ始めた。

その人の方を見ると、女の人と楽しそうに話しながらお酒を飲んでいる姿が目に入った。

いや、その人だけじゃない。
ここで仕事をしている人は、みんな真剣だし客のことを考えてる。

俺は、とんでもない思い違いをしている。
ここにいる人は、決して汚くなんかない。

俺なんかより真っ直ぐ生きてる。
一緒になんかしちゃいけなかった。
俺はこの街にお似合いだ、なんて、そんなはずがなかった。

俺の方が汚れてる。


「おい、手止まってるぞ、リョウ」

「...すみません」


それに気づいたとき、俺は無性に泣きたくなった。

俺の周りにいる人たちはこんなにも綺麗なのに。


ケイも、真白も、純粋で真っ直ぐなのに。
なんで俺はこんなに汚れているんだろう。

そこまで考えて、俺は考えることを放棄した。

真白のことは考えちゃいけない。

考えれば罪悪感に苛まれて、本当に死んでしまいそうだ。
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