キミの首輪に、赤い糸を。
「会えない?」


その言葉の意味が、よく分からない。


「...うん」


それから真白は、少しずつ話してくれた。


「...僕にはね、過去の記憶がないんだけど...だけど、なんか、覚えてる感情があって...それが、寂しいって気持ちだったんだ」

「寂しい...?」

「うん。記憶は無いけど、その感情だけは残ってる。僕、確かすごく大好きだった人と、離れたんだ。それが、すごく寂しかった。どんな場面だったかも、その大好きな人のことも何一つ覚えてないけど、すごく寂しかったことだけは覚えてる。だから、裕太くんと仲良くなって、それから離れるのが、怖い」


真白の無くした記憶、寂しい気持ち。

確かに少しずつ、真白の中で繋がっているんだと思う。


「裕太くんは、真白に会いたいと思うよ。真白も、会いたい気持ちはあるんだよね?」


私がそう言うと、真白は小さく頷いた。


「真白は、大好きな人と会わなきゃよかったって思う?」


私の質問に、真白は首を横に振る。


「大好きな人なら、真白にとって必要な人だったんじゃない?それなら、裕太くんから必要な人を奪うのは、少し違う気がする」


その言葉が真白を傷つけてしまうんじゃないか、と考える。

真白の記憶が寂しさを帯びていれば帯びているほど、真白にとって私の言葉は重くなる。

だけど、それでも...。


「私、後悔して欲しくないな」


失った記憶分、優しい幸せな記憶を、埋めてほしいって思ってしまった。
< 66 / 231 >

この作品をシェア

pagetop