キミの首輪に、赤い糸を。
私はゆっくりと真白に近づいた。

周りを見ると、公園にいた人も次々と集まってくる。

その中には、裕太くんの姿もあった。
サッカーボールを両手で持って、真白を真っ直ぐ見つめる。

真白は音色を奏で続け、人も集まり続ける。

やっぱり、すごいよ。
真白が掻き鳴らすその音は、人を惹き付ける力がある。

だけど、近づくにつれて見えてくるものがあった。

それは、真白の表情。
その表情は、前曲を聞かせてくれたときとは違う、少し寂しげな顔。

泣きそうな、何かを堪えているような。

そして、少しずつ気づく、真白が奏でる音に悲しみが帯びていること。

そっか。

真白は泣いてるんだ。
涙は流れていなくても、真白の音で分かる。


「真白...」


真白が泣いてるのは、なんで?
ここから離れたくないから?
裕太くんに悪いと思ってるから?

それとも、過去の何かのせい...?


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