灰色の瞳
あれ、昨日って私、家にいたよね?
なんて、馬鹿みたいに真面目に考える。
恐る恐る1歩、また1歩、前へ出て、ようやく、飲み込むことができた状況。
昨日まで、テレビやソファー、テーブルに椅子、壁にたくさん飾ってあった家族の写真。
ハワイをイメージさせるオシャレな家具たちが、跡形もなく消えているってことに、ようやく気がついた。
「え、ちょっと、待ってよ」
自然と漏れたその声は間違いなく私で、意外にも落ち着いた声であることに、私は安心する。
落ち着こう。
とりあえず、電話だよね、うん。
部屋に戻って、携帯から母さんの連絡先を開き、発信ボタンを押す。