瞳の奥の真実
 皆はその日のために、曲を作り始めていた。


 
 そんなある日、前川くんが一人の男の子を連れてきた。

 いやな予感は的中した。

「みんな悪い。俺はフェリスを抜ける。……今は何としてでも大学に入りてえ」

 連れてきた男の子、高瀬くんを自分の代わりにギターとして入れて欲しいという。

 みんな、しんと静まり返る。

 前川くんを真っ直ぐに見ていた岡崎くんが、ドラムスティックを置いて立ち上がった。

「これ、弾いてみて」

 楽譜を受け取った高瀬くんはさっと見て、ギターを抱えた。

 前川くんとは明らかに違うタイプのその音は、楽譜からさらにアレンジを加え、それでもしっかりフェリスの曲になっていた。

「こいつなら任せられる。そう思ってる」
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