僕があの子を好きになっても良いですか?anotherstory
よく晴れた冬の日の午後
オレたち兄弟は
父さんの働く大学の研究所へ向かって歩き出した
初めてと言って良いほどの出掛けのきっかけは
午前中に入った1本の電話だった
電話してきたのは父さんで
家に財布を忘れたから届けに来てほしいというものだった
その日は斗真の体調が良かったので
電話を切った來兄が全員で行こうと提案したのだ
自宅から研究所までは10分の道のり
念のため薬は持って行ったけど
1回分の2錠だけ持って行くことに決めた
「あらこんにちはー」
研究所までの道中にある住宅街で
おばさん3人が立ち話をしていた
一応近所に住む人たちだったので顔見知りの相手
だけどおばさんたちは首を傾げた
「白羽さん家(ち)って
ご兄弟4人だったかしら?」
オレたちはその疑問を抱いた理由がすぐにわかった
斗真は家と病院の往復しか家の外に出ないので
おばさんたちに会ったことがなかったんだ