夢中にさせてあげるから《短編》番外編追加
私はドアに立ち塞がる愛児の体を左手で押した。

「……どいて」

瞬間、愛児は私の腕を掴んだ。

「男物の、制汗スプレーの匂いがする」

きっと、山城さんがつけていたやつだ。

私は愛児を見ずに答えた。

「あんたに関係ないでしょ」

「誰といたんだよ」

何よ、お前は私のお父さんか!

私はウンザリしながら答えた。

「居酒屋のオーナーさんが仕事上がりに誘ってくれたから、二人でショットバーに行ったの」

私は愛児を一瞥すると、玄関ドアを開けた。

「そいつと付き合うのかよ」
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