夢中にさせてあげるから《短編》番外編追加
愛児は少しだけ顔を離して、私の眼を見つめた。

視線が絡んだ後、私は愛児の体に身を預けた。

こんなに意地悪な男なのに、どうして?

どうして私はこの意地悪な男に抱きつきたくなったのか。

ほんと、意味が分からない。

固い胸に頬を寄せて大きく息を吸い込むと、愛児の香りがして、無意識に彼の背中に手を回した。

「なあ」

「……ん?」

「俺の部屋、来いよ」

それって。

愛児の顔を見たかったのに、身をよじった私を、彼はギュッと抱きしめた。

「凄く、優しくするから」

心臓がドクンと跳ねた。
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