夢中にさせてあげるから《短編》番外編追加
神崎愛児……長いから愛児と省略するけど、愛児はまるで私を見ず『ファラオ』のパッケージを裏返し、粗筋に眼を通し始めた。

「ほーお。面白そーじゃん、借ーりよ」

こらーっ!!

私は思わず愛児の脇腹辺りの服を掴んだ。

贅肉の無い固い腹筋が指に当たり、私は一瞬怯んだが、どうしても『ファラオ』は譲りたくない!

「ちょっとっ!私が借りるんだけど!」

すると愛児は流すように私を見下ろし、フウッと笑った。

その眼差しが凄く色っぽくて更に怯みそうになる。

ちきしょうイイ男だ、ムカつく事に!

そんな私を、愛児は眉を上げて見下ろした。

「は?」

「は?じゃないわ!あんたさあ、見えなかったの?これは私が借りようとしてたの!手、伸ばしてたでしょーが!」
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