夢中にさせてあげるから《短編》番外編追加
私の強張った声に、愛児が眉を寄せた。

「は?そーゆー意味じゃねえよ」

「じゃあどういう意味!重い女で悪かったわね!」

私は29歳で、愛児は27歳。

付き合って三ヶ月しか経ってないのに、結婚なんて話題、出せない。

だから愛児と街を歩いていても、結婚に関するものが眼に入ったら、見て見ぬふりをしていた。

例えば、ウェディングドレスのディスプレイ。

もうね、『ウェディングドレス?!見えてないよ?眼に入ってないよ?』感を出して歩道に突っ立ってるのが、まるで催眠術にかかった人、もしくはゾンビみたいで、自分でも不気味だった。

けど、私とは真逆で、ドレスを凝視している愛児を見ていると、どうしていいか分からなかったんだ。

だから、一緒にいる時にテレビでウェディング雑誌のCMが流れても、画面なんて見なかった。
< 88 / 110 >

この作品をシェア

pagetop