夢中にさせてあげるから《短編》番外編追加
ドレスは引きずるような長さじゃないけど、少しでも走りやすくしたかったから。

早く走れるように。早く愛児に会えるように。

愛児、ごめんね。

こんなややこしい女でごめん。

崖っぷちだしグーで殴るし蹴りは入れるし、私なんて可愛くないよね。

エレベーターを飛び出し、ロビーの中央まで走り出た時だった。

「神崎乃愛さん!!」

突然自分を呼ぶ声がして、私はピタリと立ち止まった。

低くて、それでいて柔らかくて艶のある素敵な声。

……へ?

今の、声は……。

私は動けず硬直した。
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