夢中にさせてあげるから《短編》番外編追加
ヒールを片手に握りしめ、ドレスの裾を大きくたくし上げ、眼には涙を溜めたままで。
「神崎乃愛さん」
ああ、嘘。
やだ、嘘でしょ。
どうして?
私の真正面……ロビーの真ん中。
光輝く大きなシャンデリアの下に、その人は立っていた。
ビシッとスーツで身をかため、両腕にバラを抱いて。
私は僅かに頭を左右に振った。
どうして、どうして。
名を呼びたいのに、唇が震えてしまって、とてもじゃないけど呼べそうにない。
「神崎乃愛さん」
「神崎乃愛さん」
ああ、嘘。
やだ、嘘でしょ。
どうして?
私の真正面……ロビーの真ん中。
光輝く大きなシャンデリアの下に、その人は立っていた。
ビシッとスーツで身をかため、両腕にバラを抱いて。
私は僅かに頭を左右に振った。
どうして、どうして。
名を呼びたいのに、唇が震えてしまって、とてもじゃないけど呼べそうにない。
「神崎乃愛さん」