不思議なこの世界(仮)
「おおお、お二方が姫様が城を抜け出す理由を調べてくれるとな!?」
「もちろん!!!どーんと任せなさい」
じいはとても嬉しそうだった。完全に私たちに心を開いてくれていた。
「そういえば、名を聞いとらなかったな」
「私はさえこ、さえでいいわよ!で、こっちが……」
「いちごです。」
「ほぅ……いちごとな……」
私が名前を聞いた瞬間、じいは遠い目をしてた。何か私の名前に引っかかることがあったのだろうか。気になったが、深くは聞かなかった。
「では、早速!姫様はどこにいるの?」
「たしか、おやつの時間って言ってたよね?」
「自室にいるはずじゃ。案内しよう」
そう言ってとことこ歩き始めたじいに、私は着いていった。
やはり、一国のお城なだけあって、とても広かった。はぐれたら迷子になってしまいそうだ。
「あれ……」
「うっ……さえちゃんどうしたの?」
さえちゃんが急に立ち止まるもんだから、私はさえちゃんにぶつかってしまった。条件反射でおでこをさする。
さえちゃんが立ち止まったのはある部屋の前だった。扉が開いていて、中に見えたのは立派な額縁に飾られていた幸せそうな家族の写真。
「あれは、姫様の父上と母上じゃ。じゃから、この国の王と妃じゃな。とても姫様を愛でておった」
「おった……?過去形なの?」
「それじゃあ、今は」
「今は…………後旅行中じゃ!ほほ!」
じいは止めていた足を動かし始めた。ものすごくためがあったから、何か深い事情があるのかと思った。だけど、じいに上手く誤魔化された感じがして、私たちはあまり納得出来なかった。じいも何か、隠していることがある。