黒猫の気ままに
家へ行く間も二匹は話をした。
「雪は俺の名前でさぁ。」
黒は首を傾げる。
「もしかして雪を知らないんですかぃ?」
「知らない。」
雪はくすくすと笑っていた。
黒は不思議に思って聞いてみる。
「いやぁ、そうだなと思いましてね。お前さん、まだ冬を過ごしたことがないんだろぃ?」
「?」
「すまねぇ、すまねぇ。冬も知らねぇか。」
黒は隣をついて行きながら、知らない言葉を頭の中で読み返してみる。
「今は冬ではなく、秋でさぁ。もうすぐ冬がやってきますぜぃ。冬はものすごく寒いんでぃ。ものすごく寒いと雪が降ってくるんでさぁ。」
うんうん、と雪は自分の説明に満足し、頷いている。
「雪ってどんなの?」
黒は雪に聞いてみた。
「白くてふわふわしてて…、みんな雪を見ると遊びたくなるんでぃ。俺の名前の由来は、毛が雪のように白いからなんですぜ。」
「しろ…」
黒はそれからしばらく、無言で歩き続けた。